隼、ふたたび

数年前、隼を手放した。その時はね、それが最善だと思っていた。あまり、乗らなくなったからね。誰かが乗ってくれるなら、それが隼にもいいと思っててね。

バイクって、やっぱり動かしていないとダメになるわけで。だから、隼は、好きなバイクだったんだけど、手放してしまった。

が、隼を、また買った。

GSX1300R隼の1型。2006年式。走行距離は、18,000km程度のもの。古い割には、走行距離が少ない。見た目はほぼ純正。カウルも綺麗だし、計器類も綺麗。エンジンのレスポンスも好調だ。

ただ、色がね、赤黒のツートンカラー。まぁ、赤は明るい赤ではなく、ちょっとダークな赤なのでいいか。それに黒が割り込んでて、「俺は速いバイクだぞー」って主張している感じがあって、それがちょっとなーって思う。

あまり、目立ちたくはないんだよ、俺は。これ、乗ってれば俺ってバレるやつじゃん。以前の隼は、黒一色だったし、同じカラーの隼も沖縄にはいたので、目立つってことはなかったんだけど、今回の隼は違うな。それに、あまり見かけない色だ。でも、買ってしまった。無性に隼に乗りたかったから。

隼の納車、2006年式、ふたたび隼。

隼を手放したときの喪失感。何かを失った感じがした。記憶とか、思い出とか。それ、手放してから気づいたことだけど、大事なものは失ってから気づくってことを教えられた。

俺は手に入れた隼のキーを回し、エンジン音を聞く。懐かしい鼓動と重厚感。跨ったときの姿勢。そうそう、これなんだよ。やっぱり、隼は、しっくりくるんだよなぁ。

少し走らせたら、風の懐に入るかのような、タイヤがアスファルトに吸い付くかのような、そんな感覚がある。エンジンのパワーも期待を裏切らない。また、この隼で、記憶に残るような思い出を作りたい。

人生には、何度でもやり直せる瞬間がある。隼を再び手に入れたことは、俺にとってその一つ。手放してから気づいたものを、もう一度大切にしようと思う。そして、今度は決して手放さないように。隼が俺に教えてくれたのは、そんな大切な人生の教訓だったね。


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